AMHが低いから、私はもう産めないの? 

 

AMHが低いということは、卵巣年齢が高いということで、さらに卵の在庫が少ないということになりますね。

こうなるともう私は産めないの?と不安になる気持ちも分かります。さて、眠っていた卵胞が1000個ほど起きて来ると、その卵胞達がAMHを出します。

 

目覚めた卵胞が多ければ、AMHは高くなり、少なければ低くなるというわけです。若い時は当然多くの卵胞達が目覚めているので、AMHは高くなります。

減数分裂の後期を行ない初め、染色体の転写(コピー)を密かに続けていきます。5ヶ月ほど経ったところで、最終段階にたどり着いた卵胞が10個ほど残り、最後の競争のスタートラインに立ちます。

ピストルの合図と共に生理がやって来て、一斉にスタートを切る(目覚めた時は1000個あった卵胞から選び抜かれた)10個ほどの優秀な卵胞達は、血液に乗ってやって来るFSH(卵胞刺激ホルモン)を我先にと奪い合います。

一番多くのFSHを得た卵胞は、丸々と大きくなって2センチほどになり、2位から下には、少しずつ小さい卵胞達が続いてゴールします。

この時ゴールを告げるのが排卵ですね。そう、一番大きくなった主席卵胞がゴールテープを切ろうとする頃、脳の視床下部から出ていたFSHはその量が減り始め、今度は一気にLH(黄体形成ホルモン)がドバーッと”サージ”して出ます。

ここで勝負あった!排卵された、一番大きく成長した主席卵胞が、ぽろっと排卵すると、負けた残りの9個の卵胞達は、P4(プロゲステロン/黄体ホルモン)を出しながら消滅していきます。

 

AMHは、こういった卵胞が成長して、排卵するまでの過程の、最初の目覚めを表す数値です。

目覚めたものが、成長の過程で他の卵胞達と競い合い、一番最後に排卵というテープを切り、排卵された主席卵胞が受精して、分割、着床、胎嚢、心拍と妊娠を進めて、新しい時代に適した子孫が遺伝子を引き継ぐための最初の一歩というわけです。

 

ホルモンの仕組みの中で、AMHが低いと成熟する卵胞も減ってきます。あなたが不安になるのももっともなのですが、ここで考えなければいけないことは、なぜ産めなくなるのか?という基本的な質問です。

年齢が上がってくると産めなくなる。これは自然に誰でも思い浮かぶ事ですよね。では、年齢が上がるとなぜ産めないのでしょうか?そう、年をとると老化するからですね。

 

では、老化すると何故産めないのでしょうか?

よく目にするのは、卵巣が老化して卵の質が悪くなるから。そうですね。では、卵巣が老化すると、何故卵の質が悪くなるのでしょうか?だんだん核心に近づいて来ましたかね。だいたい、寝ている卵胞が知らずに老化して劣化するのでしょうか?

そうですね。お母さんのお腹の中にいる時から、女性は卵巣に卵胞をたくさん持っています。

70万個とも言われていますね。その卵胞が、何もしていないのに、12歳くらいに成長して生理が始まる頃には、20万個になっているのです。

ということは、卵胞は何もしなくても、ごく早い時期からどんどん消滅していることになりますね。それなら年齢を重ねると卵胞の数は更に減っていき、どんどん0に近づいてゆくことが想像できますね。

数が減ってゆき、活性が失われていけば、そもそも持って生まれた、目覚める前の卵胞も、その質は影響を受けそうですね。しかし、それで全部の卵胞がダメとは、言い切れないのではないでしょうか。AMHが減って来て0.1とか、0になってしまっても、そこから採卵して出産する方も、少ないながらいらっしゃるのも事実です。

では、何でAMHが0なのに、出産できるのでしょうか?

AMHは目覚めた卵胞が出すホルモンですよね。ということは、AMHが0だから、卵胞の在庫が全くないという事ではないのです。卵巣の活性が下がって、反応している卵が今週期は数値に出ていませんよというわけです。だからAMHが0.0でも出産できる人も稀にいるのです。

ただ、反応している卵が見当たらないのも事実ですし、AMHがゼロになって閉経に向かうのも事実ですから、大丈夫だいじょうぶ〜と、のんきに構えていられないのです。採卵をできるかどうかも、分からない水域に来ていますから、ここからは本当にぎりぎりの治療です。

AMHが、次週期には持ち直してくれて、卵巣が少し元気を出してくれれば良いでしょうし、一回0.0になってもほとんどの場合、それで終わりになるわけではありません。少し出たり減ったりをしながらも、段々と採卵出来なくなってゆくのです。

 

そのほかに思い出して頂きたいのは、卵胞は寝ている状態から目覚めると、5ヶ月ほどかけて、染色体の転写をし始めるというところです。

今月仮にAMHが0.0だったとしても、数ヶ月前から減数分裂をし始めている卵胞が、まだ数週気分は排卵されずに、存在している可能性もあるのです。

これらの卵胞達が続けて数周期排卵に向かってくれるなら、そしてその中に遺伝子レベルで、コピーミスの少ないものが残っていてくれれば、そこに出産へのチャンスが残っているかも知れないのです。実際にAMHが0.0でも出産した患者さんの卵胞は、そういった卵だったかも知れません。

 

AMHが低いから、わたしはもう産めないの?

その答えは、産める可能性はまだある。でも残り時間は少ないから、とにかく諦めずに、ここ数ヶ月間頑張ってみよう!という感じになります。
ここまで来ると、諦めた時が本当の終わりなのだなあと、つくづく思うのです。